骨格の不正と矯正治療
2024年2月14日
骨格の不正と矯正治療
矯正医として日常の臨床で、もし一般歯科医と大きく異なる点があるとしたら、それは患者さんを骨格から見ているということです。
骨格から見ているといわれても、ピンとこないかもしれませんが、要は、顔を見てその中に占める歯の三次元的な位置関係を把握しているのです。
人の顔は、大まかにいうと3階建てでできています。下顎、上顎、頭蓋骨という3層構造の中で、その基準となるのは当然、脳を収めている頭蓋骨です。
つまり建物と異なり人の顔は、3階建てが基礎となっています。
人の顔は3階建てでできている
その基準に沿って1階(下顎)と2階(上顎)がのっかかっていますが、それぞれの大きさと形は当然個人によって異なります。
しかし、世の中に3メートルの身長の人がいないように、個体差には一定の範囲があります。
この考え方から、1階と2階をそれぞれ標準、大きい、小さいとタイプ別に分けると、大雑把にいえば男性の身長で160,170,180といった感じです。
図に示すように全ての人はこの九つのタイプのどれかに所属するということになります。
脳頭蓋に対して上顎と下顎のとる位置関係は、9つの組み合わせが考えられる
歯列は1階と2階にそれぞれ独立して置かれるわけですから、口腔内で同じように見える上顎前突の患者さんでも、
実際は、上顎骨が優性というよりも下顎骨が小さいため前突が生じている場合もあるのです。
また、身体に体格があるように人の顔にも体格があります。それは、咬合力が強いと考えられるがっしりしたタイプや逆に弱いほっそりしたタイプです。
咬合力が強い、または弱いと思われるタイプ
このように、患者さん一人一人はそれぞれ異なる骨格のタイプに属しており、
それによって基準となる3階の頭蓋骨に対しての3次元的な歯列の位置も影響を受けていることが分かります。
矯正治療では、叢生の除去〜つまり混雑の解消があるわけですが、顔の中でどこに歯列があるべきか?というアプローチも考慮しています。
その患者さんにとって、理想的な上下の歯列の位置に並べようと考えるわけです。
矯正治療では、歯の混雑の解消だけではなく、頭蓋骨に対する歯の3次元的位置の是正を考慮しています。
したがって、患者さんをみるときは、骨格系と骨の位置、それに伴う審美性を顧慮することが必要なのです。
(歯科衛生士のための矯正学 歯科衛生士 Vol.27 No.4/2003 参照)