親知らずと矯正後の後戻り
2024年1月27日
親知らずが出てきたので矯正後の後戻りが起きた
親知らずが出てきたので矯正後の後戻りが起きたとか、前歯が乱れてきたとか、叢生が増加したとか聞いたことはありませんか?
しかし親知らずと前歯は歯列の中では随分と離れています。親知らずの萌出力によって、いったん出来上がった歯列に叢生ができるのでしょうか。
一旦出来上がった歯列に何らかの力が後天的に加わって後戻りを起こすことはありますが、親知らずと矯正後の後戻りは関係はあまりなさそうです。
そもそも歯は一体どれくらいの力で萌出するのでしょうか。
単純そうですが意外と分かりにくい問題で、歯は数グラムの力で移動するため、かなり小さい力であろうと言われています。
明確なコンセンサスはありませんが、もし萌出途中の永久歯に十円玉をずっとのせていたら、そこで萌出が止まってしまうかもしれません。
歯は一般の人が想像しているよりもずっと弱い力で萌出しているということに間違いはありません。
いったん出来上がった永久歯列に対して親知らずが横に向いて生えてきたからといって、その萌出力が奥歯を、さらに前歯を凸凹にするとは考えずらいです。
では何故、矯正後に後戻りが起こったのでしょうか。
病的歯牙移動という言葉がありますが、これは歯周病に罹患した方が咬合力によって歯が移動することを言います。
萌出力よりも咬合力の方がはるかに大きのです。親知らずの萌出とは関係ありません。
しかし歯周病のない方だと、病的歯牙移動は起こりません。以前と比べて叢生が出てきたと感じるのはどうしてでしょう。
一番考えられる理由は、親知らずが生えてくることによって口の中に違和感を感じ、鏡で自分の歯並びを以前より観察するようになったからです。
元々あった前歯の叢生を強く意識し始めた可能性が高いのです。
人間は何か悪いことが起きると、本能的にその理由を探そうとします。親知らずはもしかしたら、矯正後の後戻りの濡れ衣を着せられているかもしれません。
親知らずは、矯正後の後戻りの原因のため抜歯されるのではなく、
そこに虫歯や周囲に炎症があったり、噛み合わせに支障を起こしている場合に抜歯となります。親知らずを抜歯しても矯正後の後戻りは治りません。
矯正後に叢生のある歯列は、できれば再度の矯正治療がお勧めですが、なぜ後戻りを起こしたのかの理由を探してからの再治療を行いましょう。
後戻りの理由として、
1、術直後の仕上がりが良くない(途中でやめた、リテーナーを入れてない)
2、以前の詰め物、被せ物が残っている
3、歯軋り、食いしばりがある
など
(歯科衛生士のための矯正学 歯科衛生士 Vol.27 No.4/2003 参照)