審美歯科学会投稿論文4

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審美歯科学会投稿論文4

2024年1月18日

症例報告

Angle Class Ⅲ 症例における咬合再構成

~矯正歯科治療と補綴歯科治療の併用~

 

A case report of occlusal reconstruction in Angle ClassⅢMalocclusion case

~Combination of Orthodontically treatment and Prosthodontically treatment~

川里 邦夫

Kunio Kawasato

 

Keyword:Angle Class Ⅲ, anterior guidance, orthodontic treatment, prosthodontic treatment

キーワード:Angle Ⅲ級, アンテリアガイダンス, 矯正歯科治療, 補綴歯科治療

                           

In occlusal reconstruction, concerned with mesio-distal positional relationship of upper and lower

arch, it is usually that over jet of anterior teeth is excess in Angle Classand it is insufficient in Angle Class. Moreover, it is too difficult to acquire anterior guidance in both situation. It is very important for considering any functions that mechanism of anterior guidance is normal and either acquire disclusion or not in molar area at the time of lateral movement. If anterior guidance is not adequate, it is more possible to load to TMJ and create teeth wear. And so, we can’t hope longevity of whole dental arch. This report is to present a case of Angle Class combined by orthodontic treatment and prosthodontic treatment, and the acquirement of adequate anterior guidance is discussed in return.

 

 

咬合再構成において, 上下歯列の近遠心的位置関係がAngle ClassⅡでは前歯の水平被蓋が過剰, Angle ClassⅢでは不足していることが多く, アンテリアガイダンスの獲得が困難である. アンテリアガイダンスのメカニズムが正常に働き, 側方運動時に臼歯部にディスクルージョンをもたらしているか否かは機能を考えるうえできわめて重要である. アンテリアガイダンスが不適切な場合, 顎関節への負担や歯の摩耗を引き起こす可能性が高く, 歯列全体の長期的維持が望めない. 今回、Angle ClassⅢ症例において矯正歯科治療と補綴歯科治療を併用し, 良好なアンテリアガイダンスを獲得できたので報告する.

 

緒言

成人における歯科治療は, 既に修復補綴処置が施されていたり, 歯列や骨格に問題があるなど, 他科との連携を必要とすることがある. 今回, 不適合補綴物を装着された成人男性のAngle ClassⅢ症例に矯正歯科治療と補綴歯科治療を併用して対処し, 機能的で審美的な歯と歯列が得られたので報告する.

 

症例

本報告はヘルシンキ宣言を順守し, 行った. 初診から治療終了時までの顔面写真, 口腔内写真, エックス線写真等の資料, ならびに各種診察結果, 分析結果, 診断結果, 治療方針, 治療経過等を記した書類を本症例報告に使用することを患者本人に説明し, 論文に掲載する承諾を得た.

 

症例の概要

患者:32歳 , 男性

主訴:全体の補綴物のやり直し希望

全身的既往歴:特記事項なし

現病歴:7〜8年前に他医院にて全顎的に補綴処置を受け, その際に上顎左側第二小臼歯と第二大臼歯を抜去した.

 

診査

 1, 顔貌所見(図1)

正貌は左右非対称であり, 顔面正中に対して, 下顎がわずかなに右方偏位していた. 側貌は, Eラインからの距離:上唇-1mm(標準値0mm±1.5mm), 下唇0mm(標準値2mm±1.5mm)で上下口唇とも後方にあり, 鼻唇角85°(標準値105±8°)で上唇は前方に傾斜していた.

 

2, 口腔内所見(図2)

多数歯に不適合な補綴処置が施され, 歯肉退縮によるクラウンマージンの露出や, さまざまな色調の補綴物・充填物が混在し, 審美的に大きな障害となっていた. 上顎に比べて, 下顎は歯列弓幅径が大きく, 下顎前歯部には叢生が認められた. 上顎前歯の舌側傾斜と前歯の浅い被蓋関係が認められ, アンテリアカップリングは良好ではなかった. 上下顎の正中は一致し, 咬合高径の低下もなく, 顎関節の症状はなかった.

 

3, デンタルエックス線10枚法所見(図3)

既存修復物の不適合と不十分な根管治療が認められたが,歯槽骨の吸収は無かった。

 

4, パノラマエックス線所見(図4)

左右顎関節、骨体の変形・非対象はない,

 

5, 歯周組織検査所見(図5)

歯周組織は, 4mm以上のポケット1.9%, Bop(十)17.3%であり, 歯肉炎が認められた.

 

6, 側方頭部X線写真(表1)(図6)

SNA 84.0°SNB 80.0°ANB 4.0°から,近遠心的顎間関係はskeletal ClassⅠであった. FMA 38.0°から垂直的顎間関係はハイアングル傾向であった. U1 to FH 100.0(標準値111.2±5.2°), L1 to Mp 92.0°(標準値94.7±6.9°)から上顎前歯が4.4mm舌側((111−100=11)÷2.5=4.4mm)にあり, 下顎前歯は正常な位置にあることが分かった. 上顎前歯が舌側傾斜し, 下顎前歯は正常な傾斜のため, interincisal angleは131.0°(標準値128.3°±8.8°)と大きいが, 正常値の範囲内であった.

 

矯正治療 セラミック

矯正治療 セラミック

矯正治療 セラミック

矯正治療 セラミック

 

診断

 

叢生を伴うAngle ClassⅢの咬合再構成症例と診断した.

 

治療方針

 

CRでは上下顎歯列の正中が一致したが, 咬頭嵌合位に下顎位がわずかに右側後方に1mm偏位した. CR-ICPのズレは, 指導ピンの浮き上がり量で確認したところ0.5mmであった(図7). ボルトン分析から, 歯冠近遠心幅径は上顎前歯が正常であり, 下顎前歯は各歯ともに0.5mm大きかった(図8). 歯冠幅径の大きい下顎前歯をディスキングし、生じた空隙を利用して、下顎前歯を舌側移動させることとした. 移動後の下顎前歯の位置に対して, 上顎前歯の位置を決定し, 審美的にも機能的にも良好な被蓋関係を確立することとした. 上顎前歯の舌側傾斜と前歯の浅い被蓋関係を改善するために, 上顎前歯の唇側傾斜移動と歯冠側移動を行うこととした. 上顎は補綴歯科治療、下顎は矯正歯科治療にて行うこととした.

Angle ClassⅢを改善するため, 上顎前歯歯冠長を通常より1mm長くし, 全体的に上顎歯列弓幅径は大きく, 下顎歯列弓幅径は小さく, 補綴物を作製し, 上下顎の歯列弓幅径の差を改善するようにした. その結果, 審美的な結果だけでなく, アンテリアカップリングを獲得し, アンテリアガイダンスが得られ, 臼歯離開が起こり, 臼歯咬合面形態が維持され, 咬頭嵌合位が安定することを目的とした(図9).

 

矯正治療 セラミック

矯正治療 セラミック

 

治療計画

 

治療計画を作成するにあたっての患者からの要望は,審美性に関しては, 天然歯同様に綺麗になれば喜ばしいとのことであった. よって, 補綴物はすべて再製を行うこととした.

 

治療計画とその手順を以下に示す.

 

1) スケーリングおよびブラッシング指導

2) プロビジョナルレストレーション

3) 根管治療、カリエス治療

4) 矯正歯科治療(下顎)

5) 再評価後に問題点の改善

6) 最終補綴歯科治療

7) メインテナンス

 

補綴設計は, 上顎左側ブリッジ以外は全て単冠のオールセラミッククラウンとし, 下顎左側第二小臼歯は実質欠損が少ないためセラミックアンレーとした.

 

治療経過

 

既存の補綴物を除去し, プロビジョナルレストレーションに交換し, 歯周基本治療, モチベーション, TBI, SRP, 根管治療, カリエス治療を行った. その後, 支台歯の軸面を修正し, 全顎印象を行い,セカンドプロビジョナルレストレーションを作製した. その際, 上顎前歯の歯冠長を通常より1mm長くし, 被蓋が浅くならないようにした(図10).セカンドプロビジョナルレストレーション装着後, ブラケット装置を用いて下顎の矯正歯科治療を開始した(図11).  Angle ClassⅢを改善するために, 下顎臼歯隣接面をディスキングし,両側第一大臼歯を遠心移動して, 臼歯Ⅰ級咬合を確立した. さらに,下顎前歯隣接面をディスキングし, 空隙を確保して, 前歯のリトラクションを行った. 9カ月の矯正歯科治療の終了後, 再評価を行った. そのときの顆頭位は顆頭安定位にあり, 咬合高径は正常であった.

再評価時, 咬合平面は左下がりで(図12)、修正の必要があった. さらに, プロビジョナルの摩耗やクリアランス不足などから, プロビジョナルを再製することとした(図13). アンテリアカップリングの左右差が認められたため、上顎右側犬歯のプロビジョナルを舌側に入れ水平被蓋を減らし, 上下顎左側犬歯は天然歯のため歯冠形態修正にて少しでも水平被蓋が得られるように対応した(図14)。ファイナルプロビジョナルを装着し, 摩耗を防ぐためにナイトガードを使用した(図15). 3カ月の経過観察を行った後に, 最終補綴の作製に取り掛かった.

 

プロビジョナルレストレーション

プロビジョナルレストレーション

 

治療結果

 

最終補綴物装着時の顔貌と口唇の写真, 口腔内写真およびエックス線写真をそれぞれ図16~18に示す. 成人のため, 骨格的変化は無いが, 上下顎中切歯正中が一致し, 上下前歯の軸傾斜が改善された. その結果, 良好なアンテリアガイダンスが得られ, 咬合平面は整い, 側方運動時にディスクルージョンを獲得できた. エックス線写真から, 補綴物の適合が確認でき, 異常所見は認められなかった.側面頭部エックス線写真分析から, U1 to FH 108.0°L1 to Mp 90.0°になり, 上下顎前歯の近遠心的傾斜は正常になった. Interincisal angleは125.0°になり, 標準偏差値内での変化であった. 叢生は改善され、臼歯関係はAngle ClassⅠで, 緊密な咬合が得られ, 咬頭嵌合位の安定が得られた。その結果、保定後の後戻りは見られていない. 治療期間は2年で、現在3カ月ごとのメインテナンスを行い, 8年間ではあるが, 機能的・審美的に良好な経過を得られている. 最終補綴8年後の咬頭嵌合の状態がCusp to Fossaの関係にあることが, 模型から確認できる(図19). 歯周組織に問題はない.

 

プロビジョナルレストレーション

プロビジョナルレストレーション

 

ファイナルレストレーション セラミック

ファイナルレストレーション セラミック

 

考察

 

本症例は, 切端咬合を伴うAngle ClassⅢ症例であった. 軽度であることから, 歯性の補正による治療が可能だと判断し治療を行うこととした. Angle ClassⅢの改善, 叢生の除去およびハイアングルを悪化させないことを目標とした.

日常臨床で遭遇する咬合再構成が必要な症例は, アンテリアガイダンスの喪失や減少が, その状況に至った要因のひとつと考えられる. 経過が長ければ, 顆路の平坦化が生じることもある. 欠損に起因する対合歯の挺出,隣在歯の傾斜, 歯列不正などを併発し, その結果、スピーカーブやウィルソンの湾曲が強くなり, 臼歯部のディスクルージョンを阻害していることが多く見受けられる. Mannsらは、臼歯が参加するグループファンクションよりも犬歯誘導のほうが側方運動における筋活性が低下し, 筋の疲労が少ないと示している. Williamsonらは, 実際にどのような角度を与えたら筋活性が少ないかを調査し, 誘導角度が平坦であればあるほど, 筋活性は低下すると報告している. 咀嚼効率を下げないためには適切な咬頭傾斜角は必要だが, 顎口腔系の保全や修復物の保護のためには臼歯部のディスクルージョンも獲得しなければならない. Angle ClassⅢを有する患者においては急峻なアンテリアガイダンスを付与できないため, アンテリアガイダンスによる臼歯部ディスクルージョンを阻害しない咬合平面の設定も重要と考える.

上顎前歯舌側面と下顎前歯唇側面のなす角度をインターインサイザルオープニングアングルといい, Slavicek、はその理想的な角度は43〜45°と述べている. その角度が小さすぎると, 下顎前歯切端の隅角は咬頭嵌合位あるいは咀嚼運動時において外傷をもたらす可能性があるとThomasは述べている. 本ケースにおいては、Angle ClassⅢのためインターインサイザオープニングアングルは小さい角度, つまり下顎前歯切端が外傷となる可能性があるため, 少しでも大きな角度になるように下顎前歯切端唇側を45°の角度で形態修正を行い, 外傷を避けるようにした(図20). ただし, Angle ClassⅢのため被蓋は浅くなり, 上顎前歯舌面形態の修正には限界があった.

また, ファイナルプロビジョナルレストレーションの顎位を最終補綴に移行するためにクロスマウントを行った(図21). 審美的・機能的に問題のない現在の咬頭嵌合位で最終補綴を作製することが目的であった. まず, 右側のプロビジョナルを外した状態でバイトを取り, 次に、左側のプロビジョナルを外した状態でバイトを取り, 最後に前歯部を外してバイトを取ることで, 現在の咬頭嵌合位をトランスファーでき, ファイナルプロビジョナルレストレーションの情報を最終補綴に落とし込めることができた.

さらに, ジルコニアでブリッジのフレームを作製する場合, フレームはワンピースで出来上がることになるが,その際の問題点としてフレームの適合の確認ができないことが上げられる. そのため, メタルコーピングを口腔内で連結し, 副歯型を戻し、副歯型を石膏で固定し,適合を確認するための模型を作製し,フレームの適合の確認を行った(図22).

現在, 治療終了後8年を経過し安定した被蓋関係を維持しているが, 審美的かつ機能的な観点から長期的に予後を観察していく必要がある.

 

セラミック 咬合

セラミック 咬合

 

結論

 

本症例では, 不適合補綴物を装着された軽度のAngle ClassⅢ症例を, ブラケット装置による矯正歯科治療によって歯列の改善を行い, 修復補綴歯科治療を併用して, 機能的・審美的な歯および歯列が得られた. Angle ClassⅢ症例において, 矯正歯科治療と補綴歯科治療の併用は, 機能的・審美的に有用であった.

 

本論文において, 他者との利益相反はない.

 

文献 

 

1)山﨑長郎 審美修復治療 ~複雑な補綴のマネージメント~ 第1版 クインテッセンス出版、東京、22-54 .  1999.

2)  William R Proffit. 作田守監修 高田健治訳 プロフィトの現代歯科矯正学 第1版

クインテッセンス出版、東京、506-524 .  1989

3) 長岡一美 現代日本人成人正常咬合者の頭部X線規格写真および模型計測による基準値について日矯歯誌 52(5) 467-480. 1993

4)  Manns A, Chan C, Miralles R : Influence of group function and canine guidance on electoromyographic activity of elevator muscles, J Prosthet Dent , 57, 494-501, 1987.

5)  Williamson EH, Lundquist DO : Anterior guidance : its effect on electoromyographic activity of the temporal and masseter muscles, J Prosthet Dent ,49, 816-823, 1983

6) Slavicek, R : Prinzipien der okklusion.  Inform. Odontodont. Kieferorthop. 3(4):171-212.  1982.

7) PK Tomas、館野常司監訳 : ナソロジカルオクルージョン 第1版 書林 東京 127-150.  1977.

 

 

 

 

審美セラミック治療

 

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