臨床歯周病学会投稿論文3

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臨床歯周病学会投稿論文3

2023年12月25日

垂直性骨欠損のある上下顎大臼歯部に歯周組織再生療法を行った一症例

       

Treatment of vertical bone defect with enamel matrix derivative

in the upper  and  lower molar A  case  report

川里 邦夫

KAWASATO  Kunio

キーワード:垂直性骨欠損、EMD、骨移植、骨欠損形態、

 

諸言

 

中等度以上の歯周炎において骨内欠損を治療する際, 歯周組織再生療法の適応は, 歯周基本治療後に深いポケットが残存し, 垂直性の骨欠損で深さ4mm以上, 幅2mm未満の深くて幅の狭い骨欠損であると言われている. 今回は広汎型重度慢性歯周炎患者の上顎左右側臼歯部, 下顎右側臼歯部に, エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)と骨移植材を用いて歯周組織再生療法を行った経過良好な症例を報告する.

 

症例の概要

患者:34歳, 女性

初診:2012年 9月

主訴:右上の奥歯でかむと痛い, 歯周病の治療をしてほしい.

全身的既往歴:特記事項なし, 非喫煙者.

歯科的既往歴:今まで修復治療は行ってきたが, 歯周病の治療は受けたことがない.

 

口腔内所見:口腔衛生状態は不良. すべての歯に, 歯肉の発赤・腫脹が認められた. 5  ,  3 ,  6  ,には出血も認められた.

7 6 4  4 6 7 , 7 6 5 ,には6mm以上のポケットが認められ,上下顎前歯と上顎左側臼歯部にⅠ度からⅡ度の動揺が

あった. 4mm以上のポケットは31.3%,Bop(+)は58.3%,PCRは100%であった.

上下顎臼歯部に修復物があるが,辺縁は適合し2次カリエスもなく問題はなかった.

エックス線所見:全顎的に中等度の水平性骨吸収が認められ, 7654  4567と7654に垂直性骨吸収があり,

特に6には根尖にまで骨欠損がおよんでいた.

 

家族歴:両親とも当クリニックでメインテナンス中であり,重度の歯周炎はない.

 

歯周組織再生療法 エムドゲイン

歯周組織再生療法
エムドゲイン

 

診断:広汎型重度慢性歯周炎

 

治療計画:①歯周基本治療:口腔衛生指導(OHI), スケーリング・ルートプレーニング(SRP)  咬合調整

②再評価

③歯周外科治療:歯周組織再生療法

④再評価

⑤口腔機能回復治療

⑥サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)

 

歯周組織再生療法 エムドゲイン

歯周組織再生療法
エムドゲイン

 

治療経過:歯周基本治療で口腔衛生指導を行い, すべての歯にSRPを行い,側方運動時の臼歯部の

咬合干渉を咬合調整し、夜間はナイトガードを横着し、3ヵ月後に再評価検査を行った.

その際に,654  4567, 7654 に4mm以上のポケットとBop(+)が認められた. 患者は治療に協力

的で口腔衛生状態もPCR 8%と改善し良い状態が維持できていたため, 上顎左右側臼歯部と下顎

右側臼歯部に対して歯周外科の説明を行い同意を得て, EMDと骨移植材(異種骨Bio-Oss )

を用いた歯周組織再生療法を行うことにした.

下顎右側臼歯部の歯周組織再生療法(2013.3)において, 7 6 5 4 隣接面に浅く広いクレータ状の

骨欠損が認められたが, リコール時にデンタルX線写真で骨欠損の部位に骨様不透過像を確認した(図5).

また, 上顎右側臼歯部の歯周組織再生療法(2013.5)において, 6 近心に狭くて深いくさび状の骨欠損,

7 5 近心に浅くて広い2壁性の骨欠損が認められたが, リコール時にデンタルX線写真で骨欠損の部位

に骨様不透過像を確認した(図6). そして, 上顎左側臼歯部の歯周組織再生療法(2013.11)において,

6 周囲に深くて広いカップ状の骨欠損が認められたが,

リコール時にデンタルX線写真で骨欠損の部位に骨様不透過像を確認した(図7).

骨補填材は厚生労働省認可材料(Bio-Oss Geistlich社)を使用した.

歯周外科より3ヵ月の再評価期間をおいて, SPTに移行した(2014.2).

4年7ヵ月後の再評価(2018.8)において, PPD 3mm以内,

BoP(+)は認められず,歯周組織の状態は安定していた.PCRは7.5%であった.

6 7 に関しては, SPT移行1年後,咬合調整ならびに暫間固定をおこなった.

 

歯周組織再生療法 エムドゲイン

歯周組織再生療法
エムドゲイン

 

歯周組織再生療法 エムドゲイン

歯周組織再生療法
エムドゲイン

 

 

考察  

歯周組織再生療法では,術前の骨欠損の状態,術後の再生された骨量を規格化されたエックス

線撮影方法や測定器具で正確に評価することが大切である. 術前のデンタルエックス線写真において,

骨欠損の角度が22°以下であれば37°以上の場合と比較してEMDを用いた歯周組織再生療法の効果が期待

できるとされる. また、骨欠損形態が1壁性よりも3壁性のほうが歯周組織の再生は有利といわれているが,

今回は, クレーター状・1~2壁性・カップ状であったため, EMDと骨補填材を併用した歯周組織再生療法を選択した.

それは, EMD単独で応用した場合, 歯肉弁を一次閉鎖できたとしても, EMDの物理的な性質上,スペース確保が困難なため,

軟組織の形態を維持し続けることは容易ではなく1~2壁性や広い骨欠損の形態によっては軟組織の陥没を生じてしまい

良好な結果が得られない可能性もあったからである. さらに,1壁性骨欠損の部位はEMDと骨補填材に合わせて,

術野・術後の安定のためにチタン強化型バリアメンブレンを併用することも検討しなければならない.

歯周組織再生療法の際に骨補填材を併用した場合、エックス線写真では不透過像として確認できるが、

失われた歯槽骨が再生されたわけではない.術後の経過観察において,エックス線写真の不透過像に加え,

骨梁や歯槽硬線,歯槽頂線の明瞭化などの重要な指標を加えて判断することがいいと考えている.

本症例においては、歯周外科後のエックス線写真で,骨欠損部に骨梁や歯槽硬線,歯槽頂線が認められた.

今回このような良好な結果が得られた要因には, EMDと骨補填材を併用することでスペースメイキングを

確実に行えたことがあげられる.血流を考慮したフラップデザインを用いて減張切開を行い,縫合後に起こり

うる裂開のリスクを最小限に抑えられた. さらに確実に成功に導くためには,歯周組織の創傷部の抵抗力が

最も弱い術後14日間を外的な刺激から守り安定させるべく,歯周パックを使用したことも有効であった

と考えている.元来歯周パックは歯肉弁根尖側移動術などで用いられ,歯周組織再生療法では必ずしも必要

とはされていないが,併用療法にあたっては,より歯周組織の安定性を得るために歯周パックの使用を検討

する必要があるかもしれない. ただし, 長期間の使用で衛生不良になるので術後1週間で交換するなど,

使用に際しては細心の注意が必要である.

 

結論

広汎型重度慢性歯周炎患者に対して, 歯周基本治療後に残存した深いポケットの改善と歯周組織の再生

を目的に歯周組織再生療法を行った. 歯周組織再生療法の際には, 歯周基本治療を行ったうえで, 歯周ポケ

ットの深さ, 骨縁下欠損の深さ, 骨欠損の角度, および残存している骨壁などを考慮して, EMDと骨補填材

の併用を選択し良好な治療結果が得られた. 今後も定期的なSPTにより継続的管理が必要である.

 

このたびの論文提出に際して, 開示すべき利益相反状態はありません.

 

参考文献

1)  Hall WB: Clinical Decisions in Periodontology. 4th ed.

BC Decker Inc, 32-37, 2003.

2)特定非営利活動法人 日本歯周病学会編:歯周治療の指針2015

医歯薬出版, 東京, 24-29,53, 2015

3)  Tsitoura E, Tucker R, Suvan J et al,: Baseline radiographic defect angle of the intrabony

defect as a prognostic indicator in regenerative periodontal surgery with enamel matrix derivative.

J Clin Periodontol, : 31(8) 643-647 2004

4)  Froum S. Lemler J, Horowitz R, et al: The use of enamel matrix derivative in the treatment

periodontal osseous defects : A clinical decision tree based on biologic principles Int J Periodontics

Restrative Dent. 21(5):437-449 2001

5)  水上哲也ほか:基礎から臨床がわかる 再生歯科 成功率を高めるためのテクニックとバイオロジー

クインテッセンス出版, 東京, 145-172, 2013

6)  Cortellini P, Tonetti M, : Clinical concepts for regeneration therapy in intra-bony defects.

Periodontol 2000 : 68:282-307 2015

7)  Keestra JA,  Coucke W,  Quirynen M : One-stage full-mouth disinfection combined

with a periodontal dressing

: a randomized controlled clinical trial. J Clin Periodontol , 41(2):157-163 2014

 

 

 

歯周組織再生療法 エムドゲイン

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