PMTC
2024年11月14日
PMTC
目次
定義
PMTCとは歯科医療従事者(特にトレーニングを受けたデンタルナース、歯科衛生士、歯科医師)によって行われる
歯科医療サービスで、全歯面からプラークを選択的に除去することと定義されている。
歯肉縁下1-3mmまでに存在するプラークを機械的に操作するインスツルメントとフッ素含有プロフィーペーストを用いて除去する。この処置は、より正しくは歯肉縁上プラークコントロールを行うというより歯肉プラークコントロール(歯肉縁上プラークコントロールと歯肉縁下1-3mmのプラークコントロールを含む)と表現する。
深い歯肉縁下プラーク(バイオフィルム)も除去する場合は、デブライドメント、または広義のPMTCと表現し、歯科医師と歯科衛生士によって行われる。
罹患歯周ポケットを治療していない新規患者には、デブライドメント以外に、歯石除去(スケーリング)、その他プラークリテンションファクター(修復物のオーバーハングなど)の除去、ルートプレーニングを加えなければならないだろう。
PMTCをいわゆるプロフィラキシスやポリッシングと混同してはならない。それは回転ラバーカップとプロフィーペーストを使い、頬側面・舌側面・咬合面のいわば、ノンリスク面でセルケアによってほとんど1日2回磨けている場所を含めている。そのような予防処置やポリッシングに妥当性はない。
PMTCの材料と方法
いわゆるカールスタッド研究では、成人と子供へのPMTCに基準化した処置を採用した。
次のような材料が必要とされる。
プラークの染め出し
- プラーク締め出し綿球
- 三角型のチップまたはスパチュラ型のチップを往復運動させるためのプロフィーコントラアングルハンドピース
- ラバーカップとブラシを回転させるためのプロフィーコントラハンドピース
- フッ素化合物配合のプロフィーペースト
- 歯間部にペーストを注入するためのシリンジ
プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング(PMTC)は次のような必要に応じた流れで行われる。
- プラークを染め出す
- プロフィーペーストを歯間部に注入する
- 歯間部を清掃する
- 舌側面、頬側面、咬合面を清掃するプラークの染め出しPMTCは通常患者が気づいていない歯面をターゲットにしなければならないので、プラークの染め出しが第一ステップとなる。染め出し綿球の塗布は1分以内で、次のように行う。
- プラーク沈着がひどい部分から始めるのがベストである。下顎の舌側鼓形空隙などで、ここは唾液が豊富な染め出しが難しい場所である。
- 次に下顎の頬側鼓形空隙のプラークを、それぞれの鼓形空隙へ綿球をそっと押しつけるようにして染め出す。
- 最後に、上顎口蓋頬側歯面のプラークを染め出す。
歯間空隙におけるプラークの存在はプロービングによって確認されるべきで、連続したプラークがラインアングルに見られる場合や隣接面にう蝕や修復物があったり、歯間空隙が歯間乳頭に完全に覆われている場合は必ずプラークが存在する。
プロフィーペーストの歯間部への注入
使いすてシリンジにて、歯間部にフッ素配合ペーストを注入しやすくする。合理的な方法は、口腔底に唾液が充満する前に下顎歯の舌側から始めることである。歯肉乳頭をシリンジの先で下に押さえてから研磨ペーストを注入する。ペーストを要注意歯面に塗布したら、歯間の機械的清掃を素早く行う。
歯間のPMTC
往復運動するEVAコントラアングルハンドピースとEVAの黄色の三角チップを歯間部のOMTCに用い、露出根面には、スパチュラ型チップが適している。
チップは1.0-1.5mmのストロークで往復運動する。特に部分萌出歯のある子供には、特別なデンタルホルダーをEVAコントラアングルハンドピースにつけて行う、ダブルテーブルデザインのおかげで、乳頭の両サイドの歯肉縁下隣接面を同時にクリーニングできる。
PMTCは下顎右側臼歯の舌側隣接面からスタートすべきだ。なぜなら、右利きの平均的な患者はいつもこの領域を適切に磨けていないからである。左利きの患者にはこの反対側から始める。クリーニングは常に患者と術者の両方のモチベーションを高める目的で、最も必要とされている部位から始めることを強調するためである。歯間空隙にチップを入れる際には、歯冠に対して10度の傾きをつけて乳頭を押さえつける。乳頭に弾力があるため、歯肉縁下のクリーニング効果は少なくとも歯肉縁下2-3mmまで期待できる。コントラアンングルハンドピースの適切なスピードは約8,000−10,000rpm(つまり1分間に16,000ストロークまたは1秒間に250ストローク)である。とても早いスピード(5,000rpm未満)では、振動が患者に不快感を及ぼす。チップの方向は絶えず全ての隣接面に到達するよう垂直と水平の両方の方向で調節すべきである。同時にフッ素物含有の研磨ペーストを全てクリーニングした紙面に塗布する。前述のように、PMTCは常に下顎大臼歯の舌側面から開始すべきで、セルフケアによる清掃にどのような必要性があるかという点を考慮して行う。そしてこれにより患者の再モチベーション効果も期待されるはずだ。舌側隣接面から注意深くクリーニングできていたら、頬側の隣接面もクリーニングできる。次に、上顎の歯間面も同じ順序でクリーニングする。つまり、最初に舌側鼓形空隙、次に頬側鼓形空隙である。
大阪市北区曽根崎新1-4-20桜橋IMビル4F
かわさと歯科・矯正歯科
日本歯周病学会専門医・指導医
院長 川里 邦夫
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本当のPMTC その意味と価値 ペールアクセルソン著書より
まとめ
- 実験的には、1回のPMTCの後、最初の24-28時間歯肉溝滲出液が持続的に減少し、1週間後まで実験的レベルにまで戻らなかったことが示された(Gwinnettら1975)。2日間隔で3回のPMTCを行うと、通常1週間以内に炎症が治る。この結果、間接的にプラーク形成速度が減少する。研究によると、歯肉プラークの再蓄積速度は歯肉の炎症(Axelsson 1987; Rambergら1995)および歯肉滲出液(Saxton 1975)に直接相関することが示されている。したがって、頻回な初期PMTCと続いて必要に応じたインンターバルでのメインテナンスプログラムで、成熟し一部石灰化したプラークを取り除くことによって、患者自身の口腔清掃が高められて、新しいプラークの形成速度が減少する。プロフィーペースト中のフッ素イオンは、クリーニングされた隣接面への到達性を高め、歯肉縁下へも到達できる。よってキーリスク歯面のエナメル質う蝕や根面う蝕の再石灰化を増強させる。これにより、2次う蝕、修復物のオーバーハング、仕上げされていない縁下マージンなどの将来のプラークリテンションファクターのリスクが軽減される。ブラッシング母集団において、口腔衛生処置が費用対効果の観点と同様に必要に応じたやり方で行えば、PMTCによって、患者への強い動機づけ効果も期待できるだろう。つまり、臼歯の隣接面『キーリスク歯面』を清掃することからはじめ、その後残りの頬舌側歯面『ローリスクまたはノンリスク歯面』を清掃するというやり方である。患者はPMTCを好ましい処置形態として経験して、次は自分の努力により清潔感を維持するよう試みるようになる(Glavind 1977)。頻回なPMTCは、非外科的または外科的な歯周辺縁治療の後のメインテナンスプログラムの中で使われる成功を収めてきた。骨縁下ポケットを多くもつ患者をテスト群とコントロール群に無作為に振り分け、最初にフラップ手術、スケーリング、ルートプレーニングをした後、テスト群は2年間に2週に1度のPMTCを受けた。再評価時には骨縁下ポケットの約95パーセントが治癒し、歯肉の状態も良好だった(Roslingら 19776)。コントロール群の患者の中には明らかな歯周アタッチメントロスと歯牙喪失が起こっていた患者がいた(Nymanら 1977)。
スプリットマウス研究では、初期治療の方法が非外科的であろうと、異なるタイプのフラップ手術であろうと、その後2年間頻回なPMTCを続けた場合に、辺縁性歯肉炎の優れた治癒を認めた(Lindheら1984)。
侵襲性歯周炎の患者でさえ、初期の非外科的または外科的治療の後、頻回なPMTCを最初の2年間続けた場合、5年間以上再発が認められなかった(Wennstromら1986)。