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唾液の役割

2024年10月25日

唾液は魔法のカクテル

電動音波ブラシにおける唾液分泌効果について

 

唾液の役割とは?

唾液中に含まれる成分には、教科書的にあるだけでも約100種類、文献を調べればその数倍は存在し、私は1000種類以上あるのではと予測しています。このように唾液は多数の成分が含まれる機能水と言える液体です。

この唾液が担う役割は多数あります(図1)。

 

唾液の機能

唾液の機能

 

私たちの口腔はこの唾液により守られているといっても過言ではないのです。

そうはいってもどのような役割が重要なのでしょうか。それを考えるには、唾液の誕生から遡る必要があります。唾液が誕生したのは、生物が水中から陸上に生活の場を広げたことがきっかけと考えられます。水中にいれば口が渇くことはありませんが、陸上に上がれば空気と触れる口腔粘膜はすぐに乾いてしまいます。粘膜は乾くと細胞が大きくダメージを受けて機能が落ち、感染の入り口となってしまいます。もっとも初期に必要だった役割は、ネバネバした粘膜で感染から守ることだったと考えられています。いわゆるネバネバ唾液は非常に大事な存在なのです。

口腔内にある無数の小唾液腺は、大唾液腺より先に出現したと考えられ、小唾液腺はネバネバ唾液を出す粘液腺主体であることから、恐らく最も初期に形成されたものが現在まで引き継いでいるのでしょう。しかし、陸上の環境は非常に厳しく、単なるネバネバした成分にとどまらずに、抗菌成分を多数分泌する機能を唾液は獲得していきます。特に唾液の抗菌・抗ウイルス作用を示す成分は10種類以上確認されています。その中でも最上位の位置にあるのがIgA抗体です。

IgA抗体は、1日に100〜150mg程度口腔内に分泌され、口腔の免疫を担う重要な抗体です(図2)。

 

IgA抗体

IgA抗体

 

実は、口腔にも免疫機構が存在しており、粘膜免疫と言います。この免疫機構のお陰で、感染が予防的に防がれているのです。また、最近の研究では、新型コロナウイルスに対するIgA抗体や、歯周病原細菌P.ジンジバリスなど多数の悪玉菌と反応するIgA抗体があることが分かっています。この唾液中のIgA抗体は、アスリートなどが強度の運動を持続するとIgA抗体が減少し風邪引きやすくなることが示されています。

さて、このIgA抗体も唾液の液性の成分が無ければ口腔内を行き渡りません。唾液の量は、唾液中の成分を口腔内の隅々まで届けるための役割を担っています。さらに成人では1分間に2回ほど唾液は嚥下されますが、その際に口腔内で唾液が移動し自浄作用が働いているのです。1日16時間起きているとすれば1920回の洗浄が行われていることになります。

しかし、唾液の液性成分は、口腔内に均一に分布していません(図3)。

 

唾液量

唾液量

 

上顎中切歯唇側面は最も唾液の到達量が少ない部位です。そのため自浄作用が悪い部位になります。染め出しをすると、前歯の唇側が汚れている例が多いことをよく見かけるのではないでしょうか。一方、最も唾液の到達量が多い部位は下顎切歯舌側面で、この部位にう蝕を見る機会は非常に少ないと思います。このように唾液の働きを知ることは、口腔衛生を進める上で有用だと思いませんか。そして、これからの口腔清掃は、単なる歯磨き効果だけではなく、生体側の因子である唾液の側面を鑑みながら総合的に行うことが求められる時代になると考えています。

 

電動音波ブラシによる唾液への影響を考察する

歯磨きは基本的な口腔清掃を進める大切な行動ですが、その歯磨きでも電動音波ブラシを使用するとその清掃性や刺激によるマッサージ効果などでアドバンテージがあると考えられます。しかし、電動音波ブラシが、生体側の因子である唾液に対してどのような影響があるかは非常に興味深いところですが、これまで研究がありませんでした。そこで、電動音波ブラシを用いて、唾液の量と質(免疫力)が向上して唾液力を高めるかどうかを調査しました。

対象者は探索的な検討に必要な人数として、20代男性8名としました。そのうち1名は、唾液採得が不完全であったため、除外しされました(n=7)。また、試験期間において歯磨剤などの口腔ケア製品の使用を避けることができることを必要条件としたので歯磨剤の影響などを排除した条件で行いました。

電動音波ブラシは、クラデント社製のクラプロックスハイドロソニックイージー電動音波ブラシを用いました(図4)。

 

電動音波ブラシ

電動音波ブラシ

 

音波振動レベルは、22,000回・32,000回・42,000回振動/1分間の3パターンがありますが、今回は22,000回を選択しました。これは、最低の振動数で変化があれば、その後、振動数を増やして行なっても意味が見出せる可能性が高くなるからです。歯磨き回数は1回4分間(自動的に切れる)、1日2回以上とし、回数を記録してもらいました。毎回、上下左右を4箇所に分け、各1分間(1分間を振動で知らせてくれる)歯磨きをしてもらいました。4箇所の順番は左上から開始してもらうよう統一しています。

唾液は4分間行う吐唾法で、初回説明時に介入前の安静時唾液をコントロールとして採得しました。2回目の唾液採得は、振動を加えないで電動音波ブラシを用いて歯磨きをしてもらい、1週間後に行いました。3回目の唾液採得は、振動を加えて電動音波ブラシを用いて歯磨きをしてもらい、さらに1週間後に採得しました。

3回目の唾液量は、正規性の確認後に一元配置分散分析で有意差が認められました(P=0.001)。介入前の安静時唾液群の平均値は0.641ml/min、非電動音波ブラシ群は1.068ml/min、電動音波ブラシ群は1.109ml/minであり、対比較の結果、安静時唾液群と比較して、電動音波ブラシ群では唾液量が優位に増加(P=0.002)していました(表1)。

 

唾液分泌量

唾液分泌量

 

つまり電動音波ブラシを使用することで歯磨き中の唾液量は優位に増加するということがわかりました。

しかし、非電動音波ブラシ群と電動音波ブラシ群では有意差が認められませんでした。これは、歯磨きという刺激が電動の有無に関係なく唾液の分泌を増加させることを示していると思われます。また、今回の今回の音波振動レベルは22,000回振動/1分間の最も弱いモードで実施しましたので、今後32,000回振動/回/1分間のモードで試験を施行すれば異なる結果が得られる可能性が考えられます。

次に3回のIgA抗体量は、1分間のIgA量に換算したIgA分泌速度を比較しました。唾液量と同様に行なった一元配置分散分析で有意差が認められませんでした(P=0.819)。安静時唾液群の平均値は41.75mg/min、非電動音波ブラシ群43.94mg/min、

電動音波ブラシ群は50.85mg/minであり、有意差水準は下回らないものの、電動音波ブラシ群での平均値は増加傾向を認めました(表2)。

IgA分泌速度

IgA分泌速度

 

特に、下限値も上限値も増加していました。

この結果は、予想外で極めて興味深いです。これまでの報告では歯磨き後はIgAは減少するとされていたからです。なぜ電動音波ブラシ群ではIgA抗体量が増えるかは十分明らかではありませんが、恐らく今回使用した電動音波ブラシと関連し、そのマッサージ効果による快適さなどがIgA抗体量を増やしたのではないかと推測しています。その点で、電動音波ブラシの使いやすさによる特徴と言えるかもしれません。

これまでの口腔ケアは機械的清掃という観点のみ語られていました。しかし、今後は生体の保持する本来の機能を高めつつ清掃するという、ヒトに優しい新し歯磨きが求められる時代が来ています。

 

文献

清水智子、淵田慎也、槻木恵一、電動音波ブラシにおける唾液分泌促進効果についての探索的研究。日本唾液ケア科学誌 2024;3:8-11

 

Dental Products News  2024特集号Vol.21  参照

 

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かわさと歯科・矯正歯科

日本歯周病学会専門医・指導医

院長 川里 邦夫

 

歯周病

口臭専門外来

 

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