重度の歯周病でも歯を残せる?歯周病指導医が解説する治療の選択肢
2026年7月11日

目次
重度歯周病とは何か?〜症状と進行の目安
重度歯周病とは、歯周ポケットが6mm以上に深まり、歯を支える歯槽骨が半分以上溶けた状態です。自覚症状がはっきりと現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
主な症状は以下のとおりです。
- 歯がグラグラと大きく動く(動揺度の増加)
- 歯ぐきから膿が出る・強い口臭がある
- 歯ぐきが大幅に下がり、歯が長く見える
- 食事のたびに痛みや違和感がある
- 歯と歯の隙間が広がり、食べ物が詰まりやすい
歯周病は歯を失う原因の第1位とされており(日本歯周病学会監修「ペリオブック」)、重度まで進行すると歯が自然に抜け落ちるケースもあります。
重度歯周病では、軽度・中等度の段階とは異なり、「口腔機能回復治療」と呼ばれる噛み合わせや審美性を回復するための処置も必要になります。治療回数・期間ともに長期化するのが特徴です。
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重度歯周病でも歯を残せる可能性はあるか?

重度歯周病であっても、適切な治療の流れを踏めば歯を残せるケースは少なくありません。ただし、すべての歯を保存できるわけではなく、歯の状態を精密に評価したうえで判断します。
日本歯周病学会が監修する「ペリオブック」では、重度歯周炎の症例として51歳女性の治療例が紹介されています。すでに4本の歯を失った状態から、エムドゲインを用いた再生療法・インプラント・矯正治療を組み合わせ、治療期間5年で口腔機能を回復した事例が報告されています。
保存が難しい歯の判断基準は以下のとおりです。
- 歯根の先まで歯石が付着し、外科処置でも除去できない
- 歯根が割れている(歯根破折)
- 根尖性歯周炎を伴い、炎症を抑制できない
これらに該当しない場合は、段階的な治療で歯の保存を目指します。歯周病専門医・指導医による精密検査と治療計画の立案が、歯を残せるかどうかの鍵を握ります。
重度歯周病の治療はどのような流れで進むか?
重度歯周病の治療は、いきなり手術から始めるのではなく、まず「歯周基本治療」で炎症を抑えることから始めます。段階を踏んで治療を進めることが、日本歯周病学会の「歯周治療のガイドライン2022」でも推奨されています(日本歯周病学会、2022年)。
- ステップ1:歯周基本治療…ブラッシング指導・スケーリング(歯石除去)・SRP(スケーリング・ルートプレーニング)を行い、歯ぐきの炎症を落ち着かせます。
- ステップ2:再評価…基本治療後に歯周ポケットの深さや骨の状態を再検査し、次の治療方針を決定します。
- ステップ3:歯周外科治療・再生療法…深いポケットが残る場合は外科処置を行います。必要に応じてエムドゲインやGTR(歯周組織再生誘導法)などの再生療法を実施します。
- ステップ4:口腔機能回復治療…失った歯をブリッジ・入れ歯・インプラントで補い、噛み合わせを回復します。
- ステップ5:メンテナンス…治療終了後も定期的な検診とプロフェッショナルクリーニングを継続します。
重度の場合、治療期間は2〜5年に及ぶこともあります。実際に、ある症例では治療から8年後も3ヶ月に1度のメンテナンスで良好な状態を維持しています。
歯周組織再生療法とは何か?〜エムドゲイン・GTRの違い
歯周組織再生療法とは、歯周病で溶けた歯槽骨・歯根膜・セメント質を薬剤や膜を使って再生させる治療法です。重度歯周病で骨の吸収が著しい場合に適応が検討されます。
代表的な方法は2つあります。
- エムドゲイン療法…エムドゲインゲル(タンパク質製剤)を歯根面に塗布し、新たなセメント質・歯根膜・歯槽骨の再生を促します。再生までの治癒期間は半年〜1年が目安です。
- GTR法(歯周組織再生誘導法)…骨が溶けた部分に吸収性の膜を挿入し、歯肉細胞の侵入を防ぎながら歯周組織の再生を誘導します。骨移植材と併用することもあります。
日本歯周病学会は2023年に「歯周病患者における再生療法のガイドライン2023」を発行しており(日本歯周病学会、2023年)、再生療法の適応条件・術式・エビデンスが詳細に示されています。
再生療法には適応条件があります。骨の吸収形態(垂直性骨吸収か水平性骨吸収か)、歯根の形状、患者さんのプラークコントロール状態などを総合的に評価したうえで、実施可能かどうかを判断します。
重度歯周病と全身疾患の関係は?〜糖尿病・心疾患との関連

重度歯周病は口の中だけの問題ではなく、糖尿病・心疾患・誤嚥性肺炎などの全身疾患と双方向に影響し合います。特に糖尿病との関係は深く、相互に悪化させることが知られています。
日本歯周病学会は「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版」を発行しており(日本歯周病学会)、糖尿病患者の歯周治療では内科医との連携が推奨されています。実際に、糖尿病を合併した重度歯周病患者の治療では、内科医と歯科医が協力して治療を進めることで良好な結果が得られた症例が報告されています。
また、新潟大学大学院の研究グループは2025年5月、歯周病が重症化するとSLPI(分泌型白血球プロテアーゼ阻害因子)が減少し、過剰な炎症と骨破壊が進むことを解明しました(新潟大学、2025年5月)。この研究は国際科学誌「Communications Biology」に掲載されており、SLPIが将来の治療薬候補になりうることも示されています。
全身疾患を抱える患者さんの歯周治療では、担当医との情報共有と連携が欠かせません。問診票への正確な記入と、服薬情報の申告が治療の安全性を高めます。
重度歯周病の治療費はどのくらいかかるか?
重度歯周病の治療費は、保険診療と自費診療の組み合わせによって大きく異なります。基本的な歯周基本治療・外科治療は保険適用ですが、再生療法(エムドゲイン等)・インプラント・矯正治療は自費診療となります。
費用の目安は以下のとおりです。
- 歯周基本治療(保険)…スケーリング・SRPは保険適用。自己負担は3割負担で数千円〜1万円台が目安。
- 歯周外科治療(保険)…フラップ手術などは保険適用。1歯あたり数千円〜1万円台。
- エムドゲイン再生療法(自費)…1部位あたり3〜10万円程度が目安(医院により異なる)。
- インプラント(自費)…1本あたり30〜50万円程度が目安。
- 総合的な重度歯周病治療(自費含む)…複数の治療を組み合わせる場合、100〜200万円以上になることもあります。
治療費は歯の本数・骨の吸収程度・選択する治療法によって大きく変動します。初診時に精密検査を受け、詳細な治療計画と費用の見積もりを確認することをおすすめします。
歯周病治療・予防の取り組みの詳細は、こちらからご確認いただけます。
重度歯周病を予防・再発させないためにできることは?
重度歯周病の再発を防ぐ最大の鍵は、治療後の「定期メンテナンス」と「毎日のセルフケア」の継続です。治療で歯周組織を回復させても、プラークコントロールが不十分だと再発します。
再発予防のポイントは以下のとおりです。
- 定期検診・プロフェッショナルクリーニング…治療後は3〜6ヶ月に1度の定期メンテナンスが推奨されます。
- 正しいブラッシング技術の習得…歯科衛生士による指導を受け、磨き残しを減らします。
- 歯間ブラシ・フロスの使用…歯ブラシだけでは届かない歯間部のプラークを除去します。
- 禁煙…喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。
- 全身疾患の管理…糖尿病などの全身疾患をコントロールすることが歯周病の安定につながります。
治療終了から8年後も良好な状態を維持している患者さんに共通するのは、3ヶ月に1度の定期メンテナンスへの継続的な通院と、ご自宅での丁寧なセルフケアです。歯周病は「治療して終わり」ではなく、生涯にわたる管理が必要な疾患です。
かわさと歯科・矯正歯科の予防プログラムについて

重度歯周病の治療後も、歯を長く守るためには専門家によるサポートが不可欠です。
当院では、歯周病専門医・指導医による精密検査から始まり、個々の状態に合わせた予防プログラムを提供しています。歯を残すための治療と、再発を防ぐためのメンテナンスを一貫してサポートします。詳しくはかわさと歯科・矯正歯科 予防のページをご覧ください。
よくある質問
重度歯周病でも歯を抜かずに治療できますか?
歯の状態によっては保存できるケースがあります。歯根破折や除去不能な歯石がなければ、再生療法・外科治療で歯を残せる可能性があります。精密検査での評価が必要です。
重度歯周病の治療期間はどのくらいですか?
2〜5年が目安です。基本治療・外科治療・口腔機能回復治療を段階的に進めるため、軽度・中等度より長期化します。
歯周組織再生療法(エムドゲイン)は誰でも受けられますか?
適応条件があります。骨の吸収形態やプラークコントロールの状態によって適応を判断します。すべての重度歯周病に使えるわけではありません。
重度歯周病の治療は保険が使えますか?
基本治療・外科治療は保険適用です。ただしエムドゲイン再生療法・インプラント・矯正治療は自費診療となり、総額が100万円以上になることもあります。
糖尿病があっても歯周病治療を受けられますか?
受けられます。ただし内科医との連携が必要です。糖尿病と歯周病は互いに悪化させるため、血糖コントロールと歯周治療を並行して進めることが推奨されています。
重度歯周病の治療後、再発しないためには何が必要ですか?
3〜6ヶ月ごとの定期メンテナンスと毎日のセルフケアが必須です。治療後も継続的な管理なしには再発リスクが高まります。
歯がグラグラしている場合でも治療できますか?
治療できます。歯周補綴(連結固定)で揺れを抑えながら治療を進める方法があります。動揺度が高くても即抜歯とは限りません。
重度歯周病の治療はどの歯科医院でも受けられますか?
高度な技術が必要なため、歯周病専門医・指導医が在籍する医院での受診が望ましいです。日本歯周病学会の認定医・専門医を確認して選ぶことをおすすめします。
まとめ
重度歯周病でも、歯周基本治療・再生療法・外科治療を組み合わせることで歯を残せる可能性があります。ただし早期受診・精密検査・段階的な治療・継続的なメンテナンスの4つが揃って初めて良好な結果につながります。「もう手遅れかも」と諦める前に、まず歯周病専門医・指導医のいる医院で精密検査を受けることが、歯を守る最初の一歩です。
著者情報
院長
川里 邦夫

資格・所属学会・団体
日本歯周病学会専門医・指導医
顎咬合学会認定医・指導医
SJCD(日本臨床歯科学会)認定医
歯科審美学会認定医
矯正歯科学会
口腔インプラント学会専門医・指導医
補綴歯科学会
臨床歯周病学会認定医・歯周インプラント認定医
OJ正会員・フェローシップメンバー
AO(アメリカインプラント学会)
AAP(アメリカ歯周病学会)
