インターナルブリーチとラミネートべニア

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インターナルブリーチとラミネートべニア

2024年10月3日

臨床:症例報告(認定医ケースプレゼンテーション)

 上顎4前歯にインターナルブリーチとラミネートべニアを適応した審美回復症例

 

川里 邦夫

Serendipity かわさと歯科

 

A Case Report  :  Application of Internal Bleach and Laminate Veneers in Maxillary 4 Incisors

    for Esthetic Recovery

KAWASATO Kunio

Serendipity Kawasato Dental Office

 

キーワード:internal bleach(インターナルブリーチ),

porcelain laminate veneer(ポーセレンラミネートべニア),  symmetry(左右対称性)

 

  緒言                                 

審美修復治療は, 補綴修復装置が自然な審美性を満たしていなければ, 患者にとって治療すべてが無意味なものとなる。

なぜなら患者にとっての審美修復治療の最優先課題は, まさに審美性の獲得にあるからである。

しかし, 審美修復治療といってもその意味は幅広く, また好み(歯科医師と患者)に左右されかねない。

審美修復治療において良好な結果を得るためには, まず臨床的に色調を決定し, 形態の基本事項とそれを応用する必要がある。

今回, 打撲にて変色を伴った上顎右側中切歯と不適合な修復のなされた上顎4前歯に対し,

インターナルブリーチとポーセレンラミネートべニア処置を実施し, 審美的に良好な結果を得たので報告する。

 

Ⅱ 症例

 

本報告はヘルシンキ宣言を順守し, 本症例報告を患者本人に説明し, 承諾を得た。

  1. 症例の概要 患者は, 初診日2004年3月, 年齢30歳の男性で, 全体的に歯が汚い, 上の前歯が黄色いとの主訴で来院した。全体の修復・補綴装置のやり直し, 歯を白くしたいとのことであった。上顎右側中切歯は22歳の時に自転車から転落打撲し, 抜髄・修歯科治療を受けた既往歴があった。現病歴として, 上顎右側中切歯には変色があり, 上顎4前歯隣接面には不適合な修復処置が施され, 上顎4前歯は左右非対象で審美障害が認められた。非喫煙者で全身所見に特記事項は認めなかった。歯科治療は久しぶりで, ここ十数年未治療であった。ブラキシズムの自覚がある。
  2. 臨床初見口腔内所見において上顎右側中切歯には変色, 正中離開があり, 上顎中切歯の近遠心歯冠幅径は左右非対象であった。上顎4前歯に動揺はなく, 不適合なレジン充填がされていた。上顎側切歯は捻転し, 唇側遠心辺縁隆線は歯列から唇側に出ていた。口腔衛生状態は不良で, 歯肉の発赤・腫脹が認められた。デンタルエックス線写真所見において不良な根管充填と修復処置が確認できたが, 周囲骨の吸収は認められなかった(図1)。結果、外傷による変色と不適合な修復処置による二次カリエスによる上顎前歯部の審美障害と診断した。
    初診時の口腔内写真

    図1 初診時の口腔内写真

     

  3. 治療方針8年前に打撲し抜髄・修復治療を受けた上顎右側中切歯の変色は, インターナルブリーチにて漂白し, 正中離開と上顎左右側中切歯の近遠心幅径の左右非対称を補綴歯科治療にて回復することとした。また, 上顎側切歯の唇側遠心辺縁隆線が歯列から唇側に出ている箇所と隣接面のレジン充填をポーセレンラミネートべニアで改善することとした。患者からの要望は審美性に関しては, 天然歯よりも白く綺麗にしたいとのことで, 全顎のホワイトニングを行い, 修復・補綴装置はすべて再製作を行うこととした。
  4. 治療計画スマイルラインからの上顎左右側中切歯切端の見え具合は, ネガティブスマイルで5.5mm,アクティブスマイルで歯肉縁が見えた。歯肉の性状はthick flat typeで厚みもあった。また, 対咬関係として大臼歯関係はⅠ級, 犬歯関係はⅠ級で, over bite 3mm over jet 2mmであった(図1)。
    初診時の口腔内写真

    図1 初診時の口腔内写真

     

    1)歯周基本治療:口腔衛生指導(OHI)  スケーリング・ルートプレーニング(SRP)

    上顎右側中切歯のインターナルブリーチ, 全顎のデュアルホワイトニング

    上顎右左側中切歯プロビジョナルレストレーション, 上顎右左側中切歯形態修正

     

    2)再評価(周囲組織の炎症の有無, 上顎4前歯の審美性・機能性)

    3)上顎4前歯ポーセレンラミネートベニア装着

    4)再評価(周囲組織の炎症の有無, 上顎4前歯の審美性・機能性)

    5)メインテナンス

  5. 治療経過歯周基本治療で口腔衛生指導を行い, すべての歯にSRPを行い, 上顎右側中切歯の根管治療・インターナルブリーチ, 全顎のデュアルホワイトニング, 上顎左右側中切歯の左右幅径を合わせるために上顎左右側中切歯近心にコンポジットレジン修復(PREMISE BODY A2、Kerr)を行った(図2)。
    ワックスアップおよび口腔内写真

    図2 ワックスアップおよび口腔内写真

     

    また, 上顎左右側切歯にコンポジットレジン修復(PREMISE BODY A2、Kerr)を行い, 唇側遠心辺縁隆線が歯列から唇側に出ている箇所は形態修正用ジグを作製し形態修正を行った(図3)。

    上顎左右側側切歯の形態修正時

    図3 上顎左右側側切歯の形態修正時

     

    側方運動時の咬合干渉を咬合調整し, 夜間はナイトガードを装着し, 3か月後に再評価検査(歯周精密検査)を行った。その後, 支台歯形成を行い(図4),

    図4 ラミネートべニアの支台歯形成

    図4  ラミネートべニアの支台歯形成

     

    上顎4前歯に切端2.0mm唇側0.7mmの削除量を形成用ジグにて確認し,耐火模型にてポーセレンラミネートベニア(ヴィンテージHalo, 松風)を作製した(図5)。

    図5 最終補綴装置 ポーセレンララミネートベニア

    図5  最終補綴装置 ポーセレンララミネートベニア

     

    ポーセレンラミネートベニアを歯科接着用セメント(レジセムクリアー, 松風)にて装着した。上顎右側中切歯の口蓋側はCAD・CAM(セレック3D, シロナ)にてセラミックインレー(CEREC Blocs SO-M12)を削りだし, 歯科接着用セメント(レジセムクリアー, 松風)にて装着した(図6)。

    図6 最終補綴装置の装着時

    図6  最終補綴装置の装着時

     

    最終補綴装置装着より3か月の再評価期間をおいて周囲組織に炎症が無く, 審美性・機能性に問題がないことを確認し, メインテナンスに移行した(治療終了日2005年11月)。

    また, 患者はブラキシズムを有しており, ブラキシズムへの対応としてナイトガードを装着した。3か月ごとのメインテナンスにおいては, ブラッシング指導, 機械的クリーニング, 口腔内写真による観察, ナイトガードの調整を行っている(図7)。

    図7 最終補綴装置の装着5年後

    図7  最終補綴装置の装着5年後

     

  6. 治療結果治療期間は1年8月で, 現在3か月ごとのメインテナンスを行い, 19年間ではあるが, 審美的に良好な経過を得られている。清掃状態に問題はない。上顎右側中切歯の僅かなクリーピングがあるものの, 歯肉の発赤, 腫脹も認められず, 深い歯周ポケットも認められない(図8)。デンタルエックス線写真では, 骨吸収もなく安定している。また, 患者の審美的改善という希望に対する満足度も極めて高い。

    Ⅲ 考察

     

     審美的要求の高い前歯部領域において, 審美的な結果を得るためには, 左右対称性, 正中, 歯の見え具合, 骨組織, 軟組織, 隣在歯を含めた周囲環境(感染、汚染、炎症)を十分に考慮しなければならない。

    本ケースにおいて, 打撲によって変色した上顎右側中切歯の漂白を外部性歯根吸収の可能性のある過ホウ酸ナトリュウムと過酸化水素水によるウオーキングブリーチ法ではなく, 過酸化水素を有効成分とするオパールエッセンスブースト(ULTRADENT)を用いたインターナルブリーチ法を選択した。また, 全体の歯をさらに白くしたいとのことで, 全顎のデュアルホワイトニングを行った。その際に, 効果を上げるために痛みのでない範囲で, ホームホワイトニングの回数を増やすこととした。

    さらに審美的な結果を得るためには, 反対側同名歯に対しての処置が必要であった。それは、初診時の上顎右側中切歯の近遠心幅径が10mm, 上顎左側中切歯は7mmと, 左右非対象であったからである。そのため, 両歯の近遠心幅径を8.5mmに設定し, 左右対称となるよう上顎左右側中切歯に長石系のポーセレンラミネートベニアを装着した。これにより上顎4前歯のオールセラミッククラウンの審美的調和が図れる結果となった。その際に, supper crestal soft-tissue attachmentを阻害しないように, 歯槽骨頂から5mmの位置にポーセレンラミネートベニアのマージンを設定し、レントゲン写真にて確認した。また, 審美的な理由から鼓形空隙が空かないように, 隣接面をハーフポンティックの形態にし, ロングコンタクトとした。さらに, MI(最小限の侵襲)の概念から, 上顎右側中切歯の口蓋側はCAD・CAMにてセラミックインレーを作製した。コンポジットレジンでは吸水性が懸念されるため, セラミックを使用したことも重要であった。

    今回このような良好な結果が得られ維持されている要因には歯周基本治療にて炎症を抑制し咬合の負担を減じ, 全顎の修復・補綴装置によってⅠ級の咬合関係がさらに安定したことが挙げられる。

    現在, 治療終了後19年を経過し安定した歯周組織と被蓋関係を維持しているが, 審美的かつ機能的な観点から長期的に予後を観察していく必要がある。

     

    Ⅳ 結論

    本ケースは, 打撲にて変色を伴った上顎右側中切歯に対し, インターナルブリーチを行い, さらに全顎のデュアルホワイトニング施術し, 補綴処置を実施することで, 審美的に良好な結果が得られた。

     

    本論文において, 他者との利益相反はない。

     

    文献

    1)  山﨑長郎 審美修復治療 ~複雑な補綴のマネージメント~ 第1版 クインテッセンス出版、東京、114-133 .  1999.

    2)  川里邦夫 : インターナルブリーチ法によって色調の改善を図った歯内療法後の変色歯

    症例, 歯科審美 Vol.31 No.2, 25-107 28-110, 2019.

    3)  斉楓ら : ホームブリーチの適応方法が漂白効果に及ぼす影響, 歯科審美Vol.31 No.2, 103-107, 2019.

    4)  Tarnow DP, Magner AW and Fletcher P : Effect of the distance from the contact point to the crest of bone on the presence or absence of the interproximal dental papilla.  / J Periodontol , 63(12), 1992.

    5)  菅井琳太郎ら:バルクコンポジットレジンの吸水性が着色に及ぼす影響, 日歯保存誌Vol.66 No.5, 263-150, 2023.

     

    別刷請求先:

    〒530-0002大阪市北区曽根崎新地1-4-20桜橋IMビル4F

    Serendipity かわさと歯科  川里 邦夫

治療名
審美補綴
費用
530,000円(税込み)
内: ラミネートベニア1本/120,000円、インターナルブリーチ1本/50,000円
治療期間
6ヶ月
通院頻度
1ヵ月 2~3回
そのほか患者様情報
30歳・男性
初診日 2004. 3. (19年経過症例)

治療内容

患者様の症状
10数年前から他の歯科医院にて部分的な歯の治療を受けたが、見た目が良くない・噛めないとのことで再治療を希望された。アングルクラスⅠであった。
治療法
全顎クリーニングの後、インターナルブリーチを行い、上顎4前歯にラミネートベニアを4本装着した。
既存の被せのやり直しを行なった。
治療結果
審美的な仕上がりで、患者自身も満足した。19年経過し良好である。
現在は2〜3ヶ月おきのメインテナンス中である。

※治療結果は患者様によって個人差があります。

治療を行う上での 注意点 (リスク・副作用)

ラミネートベニアには欠け易いといったリスクがあるためナイトガードは必須である。

定期的な清掃が重要である。

そのほか

ナイトガードは必須である。

 

審美セラミック治療

 

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