垂直性骨欠損
2024年9月1日
垂直性骨欠損のある大臼歯部に歯周組織再生療法を行った症例
川里 邦夫 Serendipity かわさと歯科
本発表について, 事前に患者の同意は得られている.使用した材料が厚生労働省の認可されたものである.
【はじめに】 広汎型重度慢性歯周炎による大臼歯部の垂直性骨欠損に再生療法を行った症例を報告する.
【初診】 患者34歳女性. 初診2012年9月. 右上の奥歯で噛むと痛い, 歯周病の治療をしてほしいとの主訴で来院.
【検査所見】 口腔内所見では口腔清掃状態は不良で, すべての歯に歯肉の発赤・腫脹が認められた. レントゲン所見では
全顎的に中等度の水平性骨吸収, 上下顎右側大臼歯部・上顎左側大臼歯部に高度な垂直性骨吸収を認め、歯周ポケットも
6mm以上と深く, 4mm以上のポケットは31.3%, BOPは58.3%, PCRは100%であった. また, 上顎左側大臼歯部にⅠ度
からⅡ度の動揺が認められた. 全身的既往歴として特記事項はない. 非喫煙者で, 家族に重度歯周炎はいない.
【診断】 広汎型重度慢性歯周炎
【治療計画】 ① 徹底的なプラークコントロール ② 歯周基本治療 ③ 再評価 ④ 歯周組織再生療法
⑤再評価 ⑥ 口腔機能回復治療 ⑦ SPT
【考察】 歯周組織再生療法の際に, 徹底的なプラークコントロールを行ったうえで歯周ポケットの深さ, 骨縁下欠
損の深さ, 骨欠損の角度, 残存している骨壁などを考慮して, EMDと骨補填材の使用を選択する必要がある.
【治療経過】 歯周基本治療で口腔衛生指導を行い, 全顎的にSRPを行い, 側方運動時の臼歯部の咬合干渉を咬合調整し,
夜間はナイトガードを装着し, 3ヵ月後に再評価検査を行った. 患者は治療に協力的で口腔清掃状態もPCR8%であった. その際に4mm以上のポケットとBOPが認められた上下顎右側臼歯部と上顎左側臼歯部に対して EMDと骨移植材(異
種骨Bio-Oss )を用いた歯周組織再生療法を行った.
3ヵ月の治癒期間をおいて口腔機能回復治療を行いSPTに移行した.
【考察】 歯周組織再生療法の際に, 徹底的なプラークコントロールを行ったうえで歯周ポケットの深さ,
骨縁下欠 損の深さ, 骨欠損の角度, 残存している骨壁などを考慮して, EMDと骨補填材の使用を選択する必要がある.
【まとめ】 今回このような良好な結果が得られた要因には, EMDと骨補填材を併用することでスペースメイキングを 確実
に行えたことがあげられる . 開示すべき利益相反はない.
【参考文献】
⚫ Five-year results following treatment of intrabony defects with enamel matrix proteins and guided tissue regeneration. Sculean A, Donos N, Schwarz F, Becker J, Brecx M, Arweiler NB. J Clin Periodontol. 2004 Jul;31(7):545-9.
⚫ Ten-year results following treatment of intra-bony defects with enamel matrix proteins and guided tissue regeneration. Sculean A, Kiss A, Miliauskaite A, Schwarz F, Arweiler NB, Hannig M. J Clin Periodontol. 2008 Sep;35(9):817-24.
⚫ The use of enamel matrix derivative in the treatment of periodontal osseous defects: a clinical decision tree based on biologic principle of regeneration. Froum S, et al. Int J Periodontics Restorative Dent. 2001: 21(5):437-449.
大阪市北区曽根崎新1-4-20桜橋IMビル4F
かわさと歯科・矯正歯科
日本歯周病学会専門医・指導医
院長 川里 邦夫
- 治療名
- 歯周組織再生療法
- 費用
- 510,000円(税込み)
内: 再生療法170,000円 、 - 治療期間
- 1年半
- 通院頻度
- 1ヵ月 2〜3回
- そのほか患者様情報
- 49歳・女性
初診日 2012. 1.1.(12年経過症例)
治療内容
-
患者様の症状
- 10数年歯科医院にて治療を受けたことがなく、見た目が良くない、噛めないとのことで治療を希望された。
全身的な問題はなかった。 -
治療法
- 3箇所に再生治療をした。
- 保存可能かどうか不確かな歯を戦略的に抜歯した。
-
治療結果
- 患者自身も満足した。12年経過し良好である。
※治療結果は患者様によって個人差があります。
治療を行う上での 注意点 (リスク・副作用)
咬合性外相があるためナイトガードは必須である。
そのほか
咬合力が強いためナイトガードは必須である。