戦略的抜歯

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キービジュアル

戦略的抜歯

2024年6月13日

広汎型重度慢性歯周炎を伴ったskeletal Class Ⅱ 症例における咬合再構成

~戦略的抜歯と補綴歯科治療での対応~

 

症例報告

A case report of occlusal reconstruction for a skeletal ClassⅡmalocclusion patient with generalized severe chronic periodontal disease  ~Approach by Strategic extractions and Prosthodontic treatment~

川里 邦夫

Kunio Kawasato

 

Keyword:skeletal Class Ⅱ, anterior guidance, strategic extractions, prosthodontic treatment

キーワード:スケルタルⅡ級, アンテリアガイダンス,  戦略的抜歯, 補綴歯科治療

 

In occlusal reconstruction, concerned with mesio-distal positional relationship of upper and lower arch,  

 it is usually that over jet of anterior teeth is excess in Angle Classand it is insufficient in Angle Class. Moreover, it is too difficult to acquire anterior guidance in both situation. It is very important for considering any functions that mechanism of anterior guidance is normal and either acquire disclusion or not in molar area at the time of lateral movement. If anterior guidance is not adequate, it is more possible to load to TMJ and create teeth wear. And so, we can’t hope longevity of whole dental arch. This report is to present a case of skeletal Class with generalized severe chronic periodontal disease combined by strategic extractions and prosthodontic treatment, and the acquirement of adequate anterior guidance is discussed in return.

 

1)

 

咬合再構成において, 上下歯列の近遠心的位置関係がアングルクラスⅡでは前歯の水平被蓋が過剰, アングルクラスⅢでは不足していることが多く, アンテリアガイダンスの獲得が困難である. アンテリアガイダンスのメカニズムが正常に働き, 側方運動時に臼歯部にディスクルージョンをもたらしているか否かは機能を考えるうえできわめて重要である. アンテリアガイダンスが不適切な場合, 顎関節への負担や歯の摩耗を引き起こす可能性が高く, 歯列全体の長期的維持が望めない. 今回、広汎型重度慢性歯周炎を伴ったスケルタルクラスⅡ症例において戦略的抜歯と補綴歯科治療を併用し, 良好なアンテリアガイダンスを獲得できたので報告する.

 

緒言

成人における歯科治療は, 既に修復補綴処置が施されていたり, 歯列や骨格に問題があるなど, 他科との連携を必要とすることがある.

今回, 広汎型重度慢性歯周炎を伴った成人男性のスケルタルクラスⅡ症例に歯周組織再生療法・戦略的抜歯・補綴歯科治療を併用して対処し,

機能的で審美的な歯と歯列が得られたので報告する.

 

症例

本報告はヘルシンキ宣言を順守し, 行った. 初診から治療終了時までの顔面写真, 口腔内写真, エックス線写真等の資料, ならびに各種診察結果,

分析結果, 診断結果, 治療方針, 治療経過等を記した書類を本症例報告に使用することを患者本人に説明し, 症例報告に掲載する承諾を得た.

 

症例の概要

患者:39歳 , 男性

初診日:2016年12月

主訴:上下の前歯が動いて噛みにくい

全身的既往歴:特記事項なし

歯科的既往歴:7〜8年前に他医院にて上顎前歯を抜歯し, 可撤式義歯を作製した.その際に歯周病の治療は受けていない.

現病歴:上下顎前歯が動揺し咀嚼障害が認められた.

 

診査

1, 顔貌所見(図1)

正貌は左右非対称であり, 顔面正中に対して, 下顎がわずかに左方偏位していた.

側貌は, Eラインからの距離:上唇-2mm(標準値0mm±1.5mm), 下唇0mm(標準値2mm±1.5mm)で上下口唇とも後方にあり,

鼻唇角84°(標準値105±8°)で上唇は前方に傾斜していた.

初診時

初診時

 

2, 口腔内所見(図2)

すべての歯の歯肉に発赤・腫脹があり, 多数歯に不適合な修復・補綴処置が施され, 二次カリエスが認められた.

上顎右側中切歯・側切歯は欠損, 上顎左側中切歯は唇側傾斜し審美的に大きな障害となっていた.

下顎前歯部には叢生と挺出が認められ, 上顎前歯の舌側歯肉に咬合し前歯は深い被蓋関係で, アンテリアカップリングは良好ではなかった.

上顎左右第二小臼歯は欠損し, 犬歯関係はⅠ級・大臼歯関係はフルクラスⅡで上下顎の正中は一致し, 咬合高径の低下は疑われるものの,

顎関節の症状はなかった.

初診時

初診時

 

3, デンタルエックス線10枚法所見(図3)

全歯にわたって中等度~重度の水平性骨吸収が認められ, 7 6 3 3 67  6 3 6 に垂直性骨吸収があった.

1  2 は根尖にまで骨吸収が及んでいた.

初診時

初診時

 

4, パノラマエックス線所見(図4)

左右顎関節, 骨体の変形・非対象はない.

初診時

初診時

 

5, 歯周組織検査所見(図5)

歯周組織は, 4mm以上のポケット64.6%, Bop陽性率77.8%であり, 6mm以上のポケットは16歯,

最大のポケットな12mmであった. また, ほとんどの歯にⅠ度からⅡ度の動揺が認められた.

初診時

初診時

 

6, 側方頭部X線写真(表1)(図6)

SNA 77.5°SNB 73.5°ANB 4.0°から,近遠心的顎間関係はskeletal ClassⅡであった. FMA 28.0°から垂直的顎間関係は平均値内であった.

U1 to FH 113.5(標準値111.2±5.2°), L1 to Mp 102.5°(標準値94.7±6.9°)から上顎前歯が1.0mmm唇側((113.5−111=2.5)÷2.5=1.0mm)にあり, 下顎前歯は3.0mmm唇側((102.5−95=7.5)÷2.5=3.0mm)にあることが分かった.

上下顎前歯が唇側傾斜し, interincisal angleは116.0°(標準値128.3°±8.8°)と小さい値であった.

初診時セファロ

初診時セファロ

 

診断

広汎型慢性歯周炎 ( ステージⅣ グレードC ), 叢生を伴うskeletal  ClassⅡの咬合再構成症例と診断した.

 

治療方針

患者からの要望は, 天然歯同様に綺麗になり,よく噛めれば喜ばしいとのことであった.

よって, 修復・補綴装置はすべて除去し, 咬合再構成を行うこととした.

上顎前歯の位置を決定し, 審美的にも機能的にも良好な被蓋関係を確立することとした.

上下顎前歯の唇側傾斜と前歯の深い被蓋関係を改善するために, 上下顎前歯の舌側傾斜移動を補綴歯科治療にて行うこととした.

その際には, 予知性の乏しい12 ,  21 12を戦略的に抜歯し,

上顎前歯にはインプラントブリッジ・下顎前歯は犬歯支台のブリッジを用いることにした.

skeletal ClassⅡを改善するため, 上顎歯列弓幅径は小さく,下顎歯列弓幅径は大きく, 補綴装置を作製し,

上下顎の歯列弓幅径の差を改善するようにした.

その結果, 審美的な結果だけでなく, アンテリアカップリングを獲得し, アンテリアガイダンスが得られ,

臼歯離開が起こり, 臼歯咬合面形態が維持され, 咬頭嵌合位が安定することを目的とした(図7).

また, 上顎左右第二小臼歯が欠損していたため臼歯の咬合関係はⅡ級仕上げとした.

診断用ワックスアップ

診断用ワックスアップ

 

治療計画

治療計画とその手順を以下に示す.

1) スケーリングおよびブラッシング指導

2)  SRP, カリエス治療, 抜歯, プロビジョナルデンチャー, プロビジョナルレストレーション

3) 再評価後に歯周外科

4) 支台歯形成, プロビジョナルレストレーション

5) 再評価後に問題点の改善

6) 最終補綴歯科治療

7) メインテナンス

 

補綴設計は, 上下顎前歯ブリッジ以外は全て単冠のオールセラミッククラウンとした.

 

治療経過

歯周基本治療にてモチベーション, TBI, SRP, カリエス治療を行った. その後, 36の補綴装置を除去し,

1 2  2 1 1 2 を抜歯しプロビジョナルレストレーション, プロビジョナルデンチャーを装着した.

その際, 抜歯後の骨吸収を防ぐために人工骨(Bio-Oss, Geistlich社, スイス)を填入し,

止血用ゼラチンスポンジ(Spongel, astellas製薬)にて封鎖し,

吸収性縫合糸(MONOCRYL 5-0 , ETHICON社)を用いてクロスマットレス縫合にて縫合し, リッジプリザベーションを行った(図8,9).

戦略的抜歯

戦略的抜歯

基本治療終了時

基本治療終了時

 

基本治療終了時の再評価において, 7 6 3 3 6 7  6 3 6 に垂直性骨欠損と6mm以上の歯周ポケットとBoP陽性が認められた(図10,11).

基本治療終了時

基本治療終了時

基本治療終了時

基本治療終了時

 

患者は治療に協力的で口腔衛生状態もPCR 9%と改善し良い状態が維持できていたため,同部への歯周外科の説明を行い同意を得て,

エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)と骨移植材(異種骨Bio-Oss, Geistlich社 )を用いた歯周組織再生療法を行うことにした.

歯冠乳頭部の頬側寄りに切開を加え, 歯冠乳頭部歯肉を歯冠乳頭保存術(modified papilla preservation technique)にて舌側に剥離し,

歯肉を拳上するのみにとどめ, 頬側は歯槽骨頂部が見える最小限の剥離とした.

掻把・SRP後, EMDと骨補填材を使用し, PTFE糸(Osseo Guard PTFE Sutures USP4-0 , Zimmer Biomet社)を用いて,

垂直マットレス変法にて縫合した(図12).

歯周外科

歯周外科

 

上顎前歯部のインプラントに関しては, 顎位・咬合高径・上下顎前歯の位置・咬合平面に問題の無いことを確認し,

サージカルステントを使用してCT撮影を行い, インプラントの埋入位置を検討した.

結果、2 1に2本のインプラント埋入を計画し, サージカルガイドを作製し, インプラント(Screw-line implant Promote plus, 直径3.8mm,

長さ13mm, Camlog社, ドイツ)を二回法にて埋入した.

6カ月の治癒期間をおいて, 二次手術を行い, ジルコニアアバットメント(プロセラ, ノーベルバイオケア)を装着した(図13).

インプラント

インプラント

 

歯周外科より6カ月の再評価期間をおいて, 支台歯形成を行い, 模型上で削除量を確認し, 形成用のジグを用いて最終の支台歯形成を行った.

プロビジョナルレストレーション(プロビナイス, 松風)を装着し, 摩耗を防ぐためにナイトガードを使用した(図14,15,16).

支台歯形成

支台歯形成

ファイナルプロビ

ファイナルプロビ

ファイナルピロビ装着

ファイナルピロビ装着

 

3カ月の経過観察を行った後に, 最終補綴装置の作製に取り掛かった. 上下顎前歯部はジルコニアフレーム(松風ディスクZR-SSカラード, 松風)

に前装用陶材(ヴィンテージZR, 松風)を用いたオールセラミックブリッジ, 他の歯はすべて単冠のジルコニアフレーム(プロセラ, ノーベルバイオケア)に前装用陶材(ヴィンテージZR, 松風)を用いたオールセラミッククラウンを装着した.

その後, ブラキシズムへの対応としてナイトガードを作製装着し, メインテナンスに移行した.

最終補綴物装着時の口腔内写真, エックス線写真, 歯周組織検査表, 顔貌写真をそれぞれ図17~22に示す.

最終補綴

最終補綴

治療後

治療後

治療後

治療後

治療後

治療後

 

 

治療結果

上下顎前歯部は戦略的抜歯および補綴歯科治療にて叢生と歯軸は改善され, その結果, 良好なアンテリアガイダンスが得られ,

咬合平面は整い, 側方運動時にディスクルージョンを獲得できた. 臼歯関係はⅡ級仕上げで, 緊密な咬合が得られ, 咬頭嵌合位の安定が得られた.

また, 歯周基本治療および歯周組織再生療法の結果, 歯周組織に問題はなく, PPDは 3mm以内, BoP陽性は認められず, 歯周組織の状態は安定している. 歯の動揺は認められていない. エックス線写真から, 補綴物の適合や骨の再生が確認でき, 異常所見は認められなかった.

その結果, 治療期間は3年11カ月で, 現在3カ月ごとのメインテナンスを行い, 2年6カ月ではあるが, 機能的・審美的に良好な経過を得られている.

 

考察

本症例は, 広汎型重度慢性歯周炎を伴うskeletal  ClassⅡ症例で, 炎症のコントロールと力のコントロールが必要であった.

炎症のコントロールに関しては, 徹底したプラークコントロールと歯周組織再生療法をおこなった.

今回このような良好な結果が得られた要因には, 歯間乳頭を保存し, 血流を考慮したフラップデザインを用いて, 縫合後に起こりうる裂開のリスクを最小限に抑えられたことがあげられる.

そして, EMDと骨補填材を併用することでスペースメイキングを確実に行えたこともあげられる.

本症例は, アンテリアガイダンスの喪失や減少が, 臼歯部のディスクルージョンを阻害し臼歯の歯周炎を悪化させていた.

そのため力のコントロールに関しては, 予知性に乏しい上下顎前歯を戦略的に抜歯し, 上顎4前歯欠損部には2本のインプラント,

下顎4前歯欠損部には生活歯の犬歯支台を用いて, 予後の安定するブリッジにてアンテリアガイダンスを獲得した.

その結果, 臼歯離解咬合が得られ臼歯部の咬合負担が軽減された. また既存の修復や補綴処置が施され,

病的歯牙移動の認められた臼歯部には補綴装置を装着し, Ⅱ級仕上げの咬頭嵌合位を安定させた.

また, ファイナルプロビジョナルレストレーションの顎位を最終補綴に移行するためにクロスマウントを行った.

審美的・機能的に問題のない現在の咬頭嵌合位で最終補綴を作製することが目的であった.

まず, 右側のプロビジョナルを外した状態でバイトを取り, 次に, 左側のプロビジョナルを外した状態でバイトを取り,

最後に前歯部を外してバイトを取ることで, 現在の咬頭嵌合位をトランスファーでき,

ファイナルプロビジョナルレストレーションの情報を最終補綴に落とし込めることができた.

さらに, ジルコニアでブリッジのフレームを作製する場合, フレームはワンピースで出来上がることになるが,

その際の問題点としてフレームの適合の確認ができないことが上げられる.

そのため, メタルコーピングを口腔内で連結し, 副歯型を戻し, 副歯型を石膏で固定し,

適合を確認するための模型を作製し,フレームの適合の確認を行った.

現在, 治療終了後2年6カ月を経過し安定した被蓋関係を維持しているが, 審美的かつ機能的な観点から長期的に予後を観察していく必要がある.

 

結論

本症例では, 広汎型重度慢性歯周炎を伴ったskeletal ClassⅡ症例を, 戦略的抜歯と補綴歯科治療によって歯列の改善を行い,

歯周組織再生療法を用いて, 機能的・審美的な歯・歯周組織・歯列が得られた. skeletal ClassⅡ症例において,

戦略的抜歯と補綴歯科治療の併用は, 機能的・審美的に有用であった.

 

本論文において, 他者との利益相反はない.

 

文献

1)山﨑長郎 : 審美修復治療 ~複雑な補綴のマネージメント~. 第1版 : 22-54 , クインテッセンス出版(東京),1999.

2)  William R Proffit. 作田守監修 高田健治訳 プロフィトの現代歯科矯正学 第1版 クインテッセンス出版、東京、506-524 .  1989.

3) 長岡一美 : 現代日本人成人正常咬合者の頭部X線規格写真および模型計測による基準値について. 日矯歯誌、 52(5):467-480, 1993.

4)  Cortellini P et al. : The modified minimally invasive surgical technique. A new surgical approach for interproximal regenerative  procedures.  J Periodontol , 66(4) :261-266, 1995.

5)  Laurell L. : Guided tissue regeneration in clinical studies : a review. In : Hugoston A, Lundgren B・ed. Guided periodontal tissue regeneration. Sweden : Institute for Postgraduate Dental Education,  68-90, 1995.

6) 井上 謙 : よくわかる咬合採得. 第1版 : 79-91. インターアクション株式会社(東京), 2022.

 

ボロボロの歯の治療

治療名
歯周組織再生療法とセラミックによる咬合再構成
費用
3,600,000円(税込み)
内: オールセラミック1本/120,000円、再生療法170,000円 、
治療期間
2年半
通院頻度
1ヵ月 2回
そのほか患者様情報
39歳・男性
初診日 2018. 11.1.(6年経過症例)

治療内容

患者様の症状
10数年歯科医院にて治療を受けたことがなく、見た目が良くない、噛めないとのことで治療を希望された。
全身的な問題はなかった。
治療法
7箇所に再生治療をし、オールセラミックにて被せを行なった。
保存可能かどうか不確かな歯を戦略的に抜歯した。
治療結果
審美的な仕上がりで、患者自身も満足した。6年経過し良好である。
咬合の安定のためセラミッククラウンにて治療した。

※治療結果は患者様によって個人差があります。

治療を行う上での 注意点 (リスク・副作用)

オールセラミックには欠け易いといったリスクがあるためナイトガードは必須である。

そのほか

咬合力が強いためナイトガードは必須である。

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